「…!…す、みません」
ああやってしまった、自分の不便を一番にするばかりに、怯えるかもしれなかったその可能性の配慮が行き届かなかったと、僕は眉を下げ彼女に謝ったのでした>>154。
扉に頭をぶつけたこと、其れ自体に特に怒りは抱いていなかったけど。僕は尚更申し訳なさに困惑の色を滲ませました。彼女の表情がよく見えないのが、どうにも辛いとひとり心内に曇天以上の翳りを落としながら。
「行きたい所があって…ああ、別に怪しい勧誘じゃ無くて!…眼鏡を買いに行きたいんです。」
僕は慌てながら言葉を続けました。途中、誤魔化す言葉には傘と共に両手をゆうるり振ってみせただろうか。揺れる傘になお、慌ててその動きを押し留め、ちらりと彼女を見下ろします。
僕を訝しんでいるのだろうか。肌にあたる視線には、少し気まず気に視線を逸らしてしまいました。もしかしたら、それが彼女の不安を煽ってしまったかもしれない。僕は直ぐにへらりと曖昧な笑みを、苦笑を浮かべては、彼女のその疑心と感じる視線を和らげようと、できる限りに尽力します。
(166) 2014/10/03(Fri) 21時半頃