―― 蛍紫の部屋 ――
……けいま、せんぱい……?
[愛されている、ひと。
日向の声から知った、自分が逃がされた理由。
けれど具体的に、誰なのかなんて知らなくて、ただ、ありがとうって言えればいいな、なんてそんな、漠然とした想いで。
――誰か、を知る事も、誰か、に感謝を伝えられない事も、想像していなくて]
っあ、ぁ ―――!!
[ひゅ、と喉が鳴った音も、噛み締めすぎたくちびるから流れる血の味も、どうでも良かった。
叫びか嘆きか、慟哭してしまいそうな口を抑えて、背にあてられたぬくもりから逃げるよう、ベッドから転げた。
けして多くは無い、桂馬との記憶。いずれもが優しくて、けれど最後は。
あんな別れをした後輩を、想ってくれていたひとが、居たなんて。
助かったことを、悪く、思わない、なんて。
出来そうに、ない]
(165) sayclear 2011/05/27(Fri) 10時半頃