[ぐらぐらと沸いているたっぷりの湯に、清潔なガーゼを浸してぎゅっと固く絞れば、まずはその泥だらけな身体を丁寧に拭いていく。乾燥して固まっていたため気づかなかったが、額はぱっくりと切れていたし、腕も熱を持っているようだ。
恐らくは]
こりゃあ、ヒビが入っているかもな。
[よおく腕の状態を観察しながら、お次は消毒の準備を進める。]
…滲みるぞ。
[脱脂綿をガラス玉くらいの大きさにちぎったものを、消毒液に浸す。それをピンセットで摘まんでそっと傷口に当てれば、男はどう反応しただろうか。
皮膚の抉れた箇所は思っていたより浅い。首のひっかき傷も、重要な血管から逸れていたのは不幸中の幸いだ。
目に見える傷をすべて消毒したら、今度は怪我の治りを早め、化膿を止める生薬を練りこんだ軟膏を指で塗っていく。擦りこむように何度も傷口を撫ぜるため、これもかなりの痛みを伴っただろう。
そうして最後に、目立つ傷口に清潔な包帯を巻いて。左腕には、念のため添え木と三角巾を巻いておけば。]
痛み止めだ。飲んどくといい。
[薬包紙をひとつと、水を注いだコップを手渡した。**]
(159) 2015/04/17(Fri) 02時頃