―共同墓地 管理小屋 ゼルダ回想―
>>63
『ヨーランダ、いるかい?』
[管理小屋の扉が開き、姿を現した一人の老婆が勝手知ったる風に椅子に座る。]
『ちょっと来ない間に随分と新しい墓が増えたもんだ。…墓碑のない墓もね。』
[窓から外を見る。真新しい墓を見渡していたゼルダの目が、共同墓地の片隅で留まる。ひっそりと小さく盛られた土は、まだ幾分か湿っているような濃い色をしている。
それ以上その話をする気はないらしく、調子を変えるように切り出した。]
『そう言えばこの間、うちに泥棒が入ったのさ。ちょいと農場の様子を見に行って戻って来たら、杖が盗られてたんだよ。足腰はまだ立つけど杖がないと遠出には不便でねぇ。新しく買ってはみたものの手には馴染まないし、第一アタシは金は持っているが無駄な出費は嫌いなのさ。ドロボウを見つけたらとっちめてやりたいねぇ』
[ゼルダは杖を振り回す仕草をしてみせた。]
(158) 2011/11/19(Sat) 19時頃