―10年後の城―
既に老年期にさしかかりつつある黒猫が、鞭のような尻尾をしならせた。耳をぴくぴくと動かし、窓の外の一点をじっと見下ろす。
「ナァ……オ」
黒猫は低い声で鳴き、再び黒い尻尾をぴしりと打ち、城主を見上げた。
『いや、出迎えは私が行こう。
あれは、硝煙の臭いを纏ってきたようだ。』
そう告げる城主の言葉に納得したのかどうかはわからないが、猫は後足を持ち上げ、目を細めて顔をガシガシと掻いた。
黒猫は、永遠を生きる城主の足元を、黒豹のごとくしなやかな動きで付き従う。いつの間にか、散々嫌がっていた銀の首輪を外したがることもなくなっていた。黒猫は今や忠実な従者であり、城の住人であり、そして――狩人である。
血の色をした目を細めて、城主が「ロビン」と――猫の名を呼ぶ。
そこで待てと告げた彼の言葉を忠実に守るかのように、一度大きく欠伸をした後、猫は微動だにせずそこに侍している**
(152) leeha 2010/06/28(Mon) 22時半頃