―――……死を誘う氷に閉ざされし異界の女神《ヘル》
[最後に残された、己に尤も大きな影響を与えた一柱を呼びだす。
其れは、青い光から、豊かな胸の黒いドレスを纏った、金髪の女性の姿をとる。
霞む視界、どこか哀しげに笑む女を見て、ミシェルは目を細めた]
アタシさぁ…あんたに聴いてみたかったんだ。
―――…好きな男眷属にして、その男の子供産んで。幸せだった?
いや、始祖の癖に、随分―――人間の女みたいなことしてんのな、って。
[応えない《Hel》の薔薇色の唇は、弧を描く。 つられるように、笑った]
あの猫野郎さー…、別にお前のこと、愛してた訳じゃねーと思うんだけど。
いや、本人に聞いた訳じゃないから知らねーし、アタシに恋愛の機微なんてわかんねーけど。
自分殺してくれそうな相手なら誰でもよかったんだろ。
―――。お前、全部承知か。其れも。あの子が死ぬ運命も。
哀しくて哀しくて仕方がない癖に、難儀な女だな
[ずっと共にいたから解る、その気質に眉根を寄せ笑った]
(152) 2010/09/19(Sun) 22時半頃