[知ろうとする“俺”の姿勢に、奇しくも“私”もまた“ニコラス”と同じ事を考えていた。>>141]
(──知って、一体何とするのか。正義と
見なし、又悪と見なせばどうするつもりなのか。)
[天秤がどのように傾くのか、識覚を共にする“私”は矢張り、見透すことは叶わなかった。]
《………何かを成し遂げたような顔だな。
我らを前にする人間は浮かべることのない顔だ。》
[“ニコラス”が骸を座らせるのを、“私”はジッと眺めていた。
絶望や苦痛に満ちた顔こそ、我らが糧になりえるのに。とかつての自分を“私”は振り返る。
今はどうか。喰われてしまったものの、転生体の生みの親達はさぞ、恐怖に歪んだ顔をしただろう。だから、少しこの骸が羨ましい。
生命という概念を持たない悪魔であるからこそ、“私”はその終わりに、明星に似た輝きを見た。綺麗だ、と。*]
(149) 2016/06/23(Thu) 19時頃