……あっ!
[情けない声を洩らし、ジャニスは抵抗する事も出来ずに体を強張らせた。
近付けられた顔を、見開いた目で見詰める。
そうして冗談めいたその笑みを見たのなら、悔し気に顔を歪ませただろう。どうにか口元に笑みを浮かべるくらいの意地は、見せただろうが]
ヨハン……、クリストフよ。
よろしく、シメオン"様"?
[言い含められるまま、苦々し気に名乗りあげる。芝居口調は、なりを潜めていた。名前に続けられた揶揄も、全く効果は無いと分かっている。
……少し、揶揄い過ぎただろうか。
まるで攻守を逆転された様な感覚に、頬すら染めながら、小さく鼻を鳴らす。
そうして離されなかった手を、仕方なしに此方も握り締める。振り払わなかったのは、揶揄いではなく、意地だった。
けれどすぐに、繋がれた手を見て和らぐ視線にジャニスは気付く。であれば、ため息の一つでも吐きだして、心の中で白旗を振った]
(148) 2014/10/01(Wed) 21時頃