[曇り空がさらに影がかかり、男は空を見上げた。飛ぶ影は人の形。けれど羽根つき。見たいものではないことに、男は内心舌打ちした。]
残念。
[少し目を伏せて音を零す。
その音は他者にいわせると、スピーカーから聞こえるノイズまじりのラヂオだろう。どこか遠くから聞こえ、思わず電源を落としたくなるような不明瞭さ。
視覚から物音が聞こえた瞬間、男の目が全てそちらへと向かう。花々も呼応するように中心をわずか動かした。向き直りながら対峙するのは青黒い、”お化け”だった。がち、と歯を打ち鳴らし襲われたときのために臨戦態勢に入る]
大きな、怪物ですね?
[口を開かないままノイズが流れ出す。対人のときの男の癖か、敬語のまま]
お菓子、持ってるのか。持ってないのか。
それとも奪いにきたのか
[ あの狼のように襲いにきたのか、相手の動向をうかがうように
広げた腕の先についている爪を動かした。]
(146) 2011/10/20(Thu) 19時半頃