[――6年間前。作物も鉱物もろくにとれず、貧しいアウストの民は餓えていた。王政を倒せば、国は変わると信じていた。自分たちの力で変えられるのだと。決死の思いで起こした革命。しかし共和国になり議会になったとて、民の貧しい生活は何一つ変わらなかった。再び国を変えようと、民衆の支持を得て王位についた父に、他国からついた渾名は残虐王。
“暴民”“暴徒”
我がアウストの民が、アンゼルバイヤの民にそう呼ばれているのを何度か耳にした。豊かなこの国に生まれた人々は知らないのだろう。まだ年端もいかない子どもたちが、今日食べるパンを奪い合っていることを。なぜ近隣の村を襲うのか、その理由を。それはただただ、生きる為に他ならない。待っていても何も変わりはしない。誰も助けてなどくれない。神などいないのだ。
ならば、奪ってしまえばいい。
この国も土地も民も、全部。その準備がようやくできた。
全ては我がアウストの為に――――]
(145) 2011/11/10(Thu) 21時半頃