[あのね、ジリヤ。
そう言おうと口を開きかけたのに、彼女のほうが先に同じ音を口にした。>>16
おずおずと差し出される、丁寧に折り畳まれたワンピース。細部まで施された美しい刺繍で菫色に見えるその繊細さは、まるきり作り手の存在感そのものだ。
無意識に感嘆の息が漏れた。なんて、きれい。]
いいの…?こんな、こんな素敵なもの、私なんかの為に。…ありがとう、ありがとうジリヤ、こんな嬉しいプレゼント、生まれて初めて…!
[感極まったようにケイトは何度も繰り返し礼を口にする。大切にそうっと両腕で抱き締めて、ジリヤに向かって微笑んだ。
こんな綺麗な服は、今はまだ似合わないかもしれないけど。笑われてしまうかもしれないけど。
この服に恥じないような自分になろう。何より、これを作り上げてくれたジリヤの時間と手間と気持ちに報いたい。]
(144) 2015/05/28(Thu) 15時半頃