─回想・ランタンの樹の下─
[涙の乾いた頬に、氷の破片混じりの風が吹き付ける。
思わず目を細めた瞬間に、名前を呼ばれたきがした。]
……ジリヤ。
[再び目を開くと、目の前にはたおやかな雪の妖精。>>13
驚いて目を瞬くと、美しいその人はケイトを見つめてきれいね、と言った。
粉雪を纏った斜面のような綺麗なカーブの白い頬が、少し上気している。走って、探しに来てくれたんだろうか。]
私じゃ、お姫さまになんて程遠いわ。
…うん、でも、──ありがとう。
[気付いてくれたのが、嬉しかった。本当は、二人で一緒にとびきりのおめかしをして、一緒に祭りを回りたかった。
今年も口に出来なかった願いも、今なら言えるきがする。そうだ、誰よりも先に、大好きな友人の祭りの予定を埋めてしまおう。
変わらないものなんて、無い。だから、来年までには、きっと、例えばジリヤの傍にシメオンが居たって、平気な顔がしていられるように。]
(143) 2015/05/28(Thu) 15時半頃