―それから―
着いたわ。
[森の奥深くにぽつんと建つ小さな一軒の家の前。降り立ってフィリップを解放した私は、懐かしさに目を細めた]
ここが、私の育った場所よ。
[その家は、記憶しているより少し古びていて。思ったとおり、今は誰も住んでいないよう。
けれど、私はそれほど落ち込んではいなかった。
それは、予想していたから、というのもあるけど、それだけではなくて]
毎年ね、どこからか、衣服が届いていたの。
今思えばあれは……かあさまだったんだわ。
[翼のある私の着られる、背中の開いた特別製のブラウス。
つまりそれは、かあさまは、私があの施設にいることを知っているということ。
それならばきっと、私があそこから逃げたということも、いつか耳に入るだろう。
そして、逃げ出した私がきっと、いつかはこの場所を訪れるだろうと、かあさまならきっとわかってくれるはずだ]
(142) takicchi 2015/07/21(Tue) 18時頃