―回想 ニズ 到着前―
[赤毛の少女が少し歪にウィンクすれば、思わず顔が綻んだ。
何時だって、元気な少女の姿は、心を潤してくれる。身分も打算も何もない。彼女がほんのり思って居ることには気づかずに]
優しい?のでしょうか。
[途中で止まった手は結局、良いわよ別に。と告げられても伸ばされる訳もなく。ただ少しだけ戸惑いを唇に乗せただろう。
旅の思い出にはなれず、笑みを浮かべ。では、次会ったときに。と微笑んで。]
施しではないのにな。
[すれ違った男に>>130放った声は聞こえたかどうか。
いら立ちめいた顔。施しなどではない。
――這いつくばってでも、其れを受けようと必死だった自分とは違う姿に羨望がこもる目は事実だった。
妹を護る為になら、何だってやった。
それだけがたった一つ、自分にあるものだから。
去りゆく背を見送って]
(142) 2015/11/30(Mon) 23時頃