ーサイモン宅ー
[道中誰かと出会って目的地は同じだろうか。ならばいくつか言葉を交わし一緒に向かっただろう。
カコン、カコンと乾いた木の音。歩く度に大きくなっていく。女はこの音が好きだった。しかし、今日はその音さえ虚しく響く。サイモンの家に着いてしまった。
女は深呼吸を一つして、ベルを鳴らす。すると、中からサイモンの泣き疲れたように正気のない母親が出てきた。その様子におばさん、あの…と声を掛けると、母親は縋るように自分を抱きしめた。その様子に胸が一気に苦しくなった。本当にサイモンは、いや考えたくない。
暫くそうして、「あの子にあってやって…」と居間に通される。底には頭を垂れた彼の父親が立っていた。おじさんと声を掛け近付くと、直ぐ側に棺の中で安らかに眠るサイモンが横たわって居た。目を奪われていると父親は自分の頭を軽くひと撫でして部屋を出ていった。]
…サ………イモン?
[彼の下へ。綺麗な白い服を纏い横たわる彼の顔には傷が残っていた。その傷に触れ、頬に触れ、いつの間にか涙が溢れ流れ落ちていた。女は彼の死を悟り、彼の胸でひとしきり泣いた。そして]
(142) 2013/08/02(Fri) 19時半頃