[子守唄に包まれて、眠った夜。
私はとても満たされて、幸せで。これ以上の贅沢があるのかと思ったものだったけれど。
幸せには、際限なんてないのだと、私は思い知る。
外の世界の、広い広い夜空の下を、月の光と大好きな人の歌声に包まれながらの空中散歩。
今なら、どこまでだって飛んでいけそうな気がした。
外の世界に出られる日が来るなんて思っていなかった。
ただ、願い続けることだけは自由だと思っていた。
けれど、その願いはこうやって叶ったから。
それなら、到底叶いっこなさそうな他の願いだって、叶う日が来るのかもしれない。
叶わないとしても、願い続けることだけは自由で。
例えば、そう。何のリスクもなく獣を人間にする薬が完成して。
獣が、人間になるか、獣として生きるかを、好きに選べるような未来。
獣が獣として、身を潜めずとも、堂々と光の下を生きられるようになる未来。
そんな未来だって、来るのかもしれない]
(139) takicchi 2015/07/21(Tue) 14時頃