[目を閉じてからの3秒間。恐らくは今迄過ごしたどの3秒よりも長く、そして短い3秒間。
塀の上に陣取る"卵"が、無情にもその身を守る為にさっさと避難した事>>74など露知らず――悪いが其方を見ている余裕も、時間もありはしないもので。
だから、……否。例え目を開けていたとしても、少年のその思惑を察する事など出来なかっただろう。
当たり前だ、まさか誰が、空から降ってきた少年があまつさえ下にいる人物を態々"道連れにしてやる"なんて考えていると思うだろうか。
嗚呼せめて、せめて少年の内心で握られた拳>>103でも見えたのなら。
そうすれば男も顔を引き攣らせつつも、いっそ清々しい気分で少年と地面との熱い熱いキスを眺める気になれただろうに――しかし生憎、それは"視えない"。
そうして激突のその刹那。
男の耳へと届いたのは――降って来る少年の、低く唸るような、一言>>104。]
(133) 2015/06/21(Sun) 00時頃