―過去のはなし―
[女は鍛治職人の家に生まれ育った。
無口で職人気質の父、普段は穏やかだけど怒ると怖い母。父に似た性格の兄は数年前から都会に修業に出ていた。
女は二つ違いの妹と一緒に、店の手伝いをしながら趣味の裁縫をしていて。
そんなある日、夜中に強盗が家に押し入った。
他所で強盗を働いたのがばれて追われていた強盗は自棄になっていた。
女が異変に気付いた時、就寝の支度をしていた父と母は血だらけで既に息をしていなかった。叫び声をあげる前に羽交い絞めにされ、刃物で脅され。
そこからの記憶は無い。
――気付いた時には兄に付き添われ、町の外れの墓地に立っていた。
父と母、そして部屋に隠れさせていた妹は死に、自分は生き残ったのだと、兄や近所の人間達から聞かされ。
頭に残った傷は浅いものだったが、血が派手に出た所為か気絶したのを死んだものと判断されたらしい。]
(133) 2013/12/04(Wed) 03時半頃