天を賭け樹木に飛び移り、素早い身の熟し。
人を騙し欺く妖術を使うという言い伝えだけ聞けば、
それは常人が行える枠を、大幅に超えたファンタジーだな。
山に棲み、自然と慣れ親しむ連中の実は、
天狗の類だったのでは無いか。
普段は、羽根を嘴をあやかしの術で隠す。
――… 嘘か誠かは、千年を生きない限り存ぜないがな。
[チャイムの音と共に、若教授はさっさと講義場を立ち去る。
「御伽噺」には夢が無ければならない。
最早会えぬ時代を生きた「らしい」者共にも、
夢があればものの見方は180度変わり、
ヒトの頭から生み出される想像が、朽ちた時代に色を与える。
講義の半分がそんな偶像めいた与太話で占められていても
大学側からもう来なくていいと言われないのは、
眠い話しかしない講師よりも、幾分マシだからかも知れない*]
(132) 2014/10/01(Wed) 19時半頃