[戦闘時、男が守る項目はみっつ。
ひとつ、敵の声帯は最期の間際まで傷付けぬ事。
これは悲鳴を好む我らが船長のため。
ふたつ、船の要職者を死なせない事。
心配無用な顔ぶれではあるが、船医や航海士の気配が近くに在る時は、ことさら派手に暴れるようにしている。これは数年前に死んだ仲間が常々言っていた事で、それを律儀に今も守っている。この度もセシルが船室へ向かえる路(>>111)を拓くため、床板を踏み鳴らし喚いた。
みっつ、なるだけ怪我をしない事。
男は既に足と腹に切り傷をもらっている。痛みはもちろんある。しかしそれが躊躇に繋げられぬのが脆弱な脳の強みだ。いつかの戦闘で耳のひとつを落として戻った時、誰からか薬も治療具も高価で貴重なものだと聞かされた。船医を気遣え、とも。……それを一応は守っているというわけだ。
そんな男が、船大工の「船壊すな」の命(>>99)にだけいまいち従えぬのは、謎だ。]
(129) 2014/12/07(Sun) 21時半頃