[部屋の中に満ちる、珈琲の豆の匂いも薄れた頃。丁度ラジオから流れるニュースが一区切りしたところで、手にしたカップもまた空にはなっただろうか。
時計の針は、尚もゆっくりと、しかし正確に時を刻む。その音を聞きながら、男はついと視線を玄関へと向けた。
玄関に置いたままの、結局返せなかった本を一瞥するのと、聞き慣れたバイクのエンジン音が聞こえて来た>>118のは、ほぼ同時だっただろうか。]
………、
[てっきり、家の前を過ぎ去るかと思っていたその音は、予想に反して家の前と思しき位置から動かずに。
一秒、二秒。時計の針が十鳴っても、未だエンジン音はそこへと留まったまま。その事に訝しむように眉を寄せていれば、今度は家のインターホンが鳴らされはしただろうか>>119。]
あぁ、おはよう。
変わった時間の配達じゃあないか。
……"サービス"なら、割引券ならもう間に合っているよ。郵便屋さん。
[覗き窓から覗いた扉の前、先程見る事の叶わなかった少女の姿を見つけたのなら。
男は扉を開けて、やはり意地の悪い笑みを浮かべては居たことだろう。
――流石に先日の失態を思い出し、すぐに肩を竦めて苦笑に変えてみせはしたけれど。]
(125) 2014/10/03(Fri) 19時頃