― 一等車・個室 ―
『――搭乗の手続きは、一等車に関しては概略問題なし。
二等車両以下については乗客多数につき、多少の混乱もみられる模様。
また、一等・二等・三等の車両比率は――私見ながら、我が国の都市部では三等車の比率を――』
[さらさらとペンを走らせて、報告書を記す。
長い戦争を終え、軍事という非生産的な分野に偏重していたエネルギーを民生に注ぎ始めた故国。
その故国に、どのような鉄道網を巡らせるか――その情報を集めるのが、男の仕事だった。
線路、列車、駅舎といったハードウェアは、企業が造る。
財閥として解体されたといえ、大規模なインフラ整備などを請け負える能力を持つ企業は限られる。
三葉や熊野、新河などといった旧財閥系の企業群が、おそらくそれを請け負うのだろう。
だが――、実際に手足を動かし、汗水垂らすのが、彼らであっても]
(123) 2015/11/28(Sat) 21時頃