[美しいゆりの、美しい手が、腹に、顔に、添えられる。柔らかな手付きとあたたかな体温に、娘は笑みをより弛めて]
うん。
私、とってもしあわせだよ。
[諭すにも似て語られる言葉に、頷いた。こくこくと、何度も。
見世物小屋。その名前、存在は知っている。ゆりや、村人の口から聞いた、概要ばかりなれども。外の世界にあるというもの。それはいろいろなものを見せるのだという。そこにはいろいろなものがあるのだという。
侏儒、芋虫、人間ポンプに蛇娘、火吹き男。なんだか楽しそうだ、と娘は最初思ったけれど、ゆり達が悲しいように話すから、悲しいよいなものなのだろう、と考えた]
私、この村に生まれて、とってもしあわせ。
[それは心からの思いだ。
娘は、この村が大好きだった。
この村に生まれてこの村に育った、
この村以外は知らない、思い馳せる知能も、娘にはない]
(120) 2017/11/22(Wed) 00時半頃