(ジリヤとの会話を聞かれていたのか、それとも)
(つか、ジリヤに最後に会ったのってもしかして俺なのか)
(そういえば俺、ティモシー爺の店でヨーランダにも会ってる)
(ふたりともに会ったのは俺だけじゃないだろうけど…)
[冬将軍は何人居るんだろう。一人だけなら、ふたりともに会った人物が取り込まれている可能性が高いのではないか。
冷たい食塩水に溶けた花弁。その液体は透き通って青く、まるで夏の海みたいだな、と思った。それをレトルトに移し替え、先をフラスコに差し込む。
あとは室内の温度が下がらないように気を付けながら放置するだけ。
フラスコを冷やすのはわざわざ氷水を用意しなくても、桶に雪を汲めば手間が掛からないだろう。溶けたらまた雪を集めてくればいい。
そうやって薬の成分が一人分ちゃんと抽出されるのを見届けるまでは診療所で待とうと椅子に座る。
折れた右腕を摩る。登山で濡れ、汚れたから多分包帯を変えたほうがいいだろう。
たくさん貰ったものを返したい、と訴えたジリヤを思い出す。誰かの役に立ちたいという気持ちは自分も同じだ。
笑顔が見たい。役に立ちたい。愛されたすべてをこの島に返したい。だから、動く]
(118) 2013/12/21(Sat) 22時半頃