―ルーカスの家の前―
[店を出てからこの家の玄関>>116の前に到着するまでに、何度心臓が破裂しそうになっただろう。
バイクは段々と速度を落として、「時計の家」の前で完全に足を止めた。
薄くなったコーヒーの香りは風に紛れて消えていた。出窓のサボテンだけが、此方を見ている。]
………留守かしら。
[留守でもいいのだ。と思ってしまうのは、緊張しているから。
いつもの配達よりも少し遅い時間。この時間帯の「時計の家」を…は知らなかった。
配達の時と同じ車種のバイクから降りると、後ろに備え付けられた籠から菓子折りを取り出す。
いつもならポストに突っ込んで終わりなのだが、今日ばかりはそうもいかない。
人差し指をインターホンに近付ける。
扉が開いたら、何と言おう。
「この間はごめんなさい。あのサボテン、私が折ったの。
ムキになってしまって大人気なかったと思っているわ。」]
(118) 2014/10/03(Fri) 18時頃