ーー 回想 ーー
[初めてきちんと先生と会話したのはいつだっただろう、昔は風邪もろくに引かない子供だったから関わる機会があまり無くてきっと彼が医者になった後。
見知っていた老医と違って年若いその姿がどうも自分のイメージするお医者さんとはかけ離れていて「ミナカタのお兄ちゃん」何度親に大人に注意されてもそう呼んでいたのだ。
でも、それだけじゃなくて、多くは語らない優しさにその頃から懐いていたのかもしれない。
敬語もろくに使わず、失礼な子供と思われていたことだろう。
いつ、そう呼ばなくなったのか……父が死んだ後だ。
彼は自分の兄では無いと、父の代用品のように扱い甘えてはならないと自分を戒めた。独りであることを自覚しなければならなかったから
けれど未だに通い続けるのはやはり…寂しいのだ。これは甘えてるんじゃない、からかって遊んでるのだと自分への言い訳の為に子供じみた悪戯を繰り返している
『お兄ちゃん、死んだ人は何処に行くのかな』
最後にそう呼んだ日、父が亡くなった後のこと。
白衣を引っ張り泣きながら笑った独りぼっちの子供に、若い医者はなんと答えたのだったか。]
(115) 2013/12/19(Thu) 09時頃