― 回想、少女と ―
[初めて、レティーシャが教会へ訪れた日。
人見知りなのか、初めて会った少女は緊張している様だった。怯える幼子を慰めようと手を伸ばした。今思えば、配慮のない行動だった。落ち着かせるどころか返って、少女を怖がらせてしまったのだから。
「…貴方の手は怖い。」ぴくりと、指先が震える。慌てて手を引こうとしたが、今度は腕を掴まれてしまい、
今にも泣きそうな顔で腕を掴む少女にどうしたものか、その手を引っ込めることも出来ずにおろおろしていると、
突然、少女の表情が一変した。
すぅと表情から感情が消えてゆく。]
私が貴方を叩く?
そんな事をする訳がないでしょう。
[年端もいかない少女がそんなことを言ってのける、その意味を考えると背筋がぞっとする。
少女が両親からどの様な扱いを受けていたのか、容易に想像が出来た。
しかし、何より、急に態度を豹変した少女に戸惑いを隠せない様子だった。一瞬、見開いた目を細めて――…、穏やかな笑みを浮かべて少女の言葉を否定する。]
(113) 2015/04/16(Thu) 21時半頃