[毎回変わる味に出会うたびどれだけ精進を重ねようとも己の力が及ぶ範囲などごく僅かなものなのだと気づく。この客が頼む、"いつもの"カクテルが狐に与えた智慧はそのようなものだった。]ヴェルヌイユ様のお言葉で、古い詩を思い出しました。……ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。世の中にある人とすみかと、又かくのごとし。朝に死に、夕べに生まるるならひ、ただ水のあわにぞ似たりける。[そのように狐は読み解いただろう。]*
(111) 2022/08/12(Fri) 15時半頃