――ええ、もちろんあなたがそんな方ではない事くらいわかっています。
覚悟、していらっしゃるのでしょう。僕はそのような遺体を、ソフィアを見るまで知りませんでした。ですがあなたは知っている。
供物になって死ぬ事も、あるいはミツカイサマの手によって死ぬ事も、あなたはきっと了承済みだ。村の年輩の方は、皆そうでしょう。そうなのでしょう。信じています。
……結局、これは僕の私的な独白に過ぎません。自分勝手な思いを、生贄の皆さんに、村の皆さんに押しつけてしまっているだけだ。
そうです。これはただの決意表明です。若造の独り言と思って、聞き流していただいて構いません。
[自嘲気味に口元を吊り上げて、しかし青年は語る]
僕は姉を殺したくありません。友人を殺したくありません。例え本人達が自らの死を了承していたとしても、『僕が』殺したくないのです。
昨晩、パピヨンさんは僕達に――僕達の中に居るかもしれない、ミツカイサマに願いました。誰ひとり死ぬことなく、森を抜けさせてほしいと。
(111) 2010/08/02(Mon) 22時半頃