[祭壇にて祈る女は、本物の聖女の様だった。
その場に纏う空気は聖を孕み、聖堂の窓に僅か残った色硝子が場を照らし出せば、色素の薄い髪が何処までも美しく輝いていただろう。
天からの光は神の降誕を唄う星の光にもよく似ていて、それに照らし出される一幕は、良く出来た宗教画の一枚の様に。
それでも黒い男は臆する事も無く、祈り捧げる光の中に、その汚れた手を伸ばすのだ。]
おい、
聞いてんのか、仰九羅
[どう言うつもりか知らないが、その化けの皮引っぺがしてやる。
力任せに細い肩を掴み、無理やり此方を向かせ、
しかし、
その顔は、]
………麗亞…?
[毒気の無い女の姿に拍子抜けして、見つめあったまま数秒間。
ぽかんと開けたままの口からやっと絞り出した言葉は初代当主の名では無く、「現当主」たる少女の、入れ物であった彼女の名前。]
(109) mzsn 2015/09/24(Thu) 02時頃