[唇を噛みしめる。そうしないと、もうこらえ切れそうになかった。
ああ、かっこわるいな、年上なのに、お姉さんなのに。
さっきもそう思った。くだらない話だ。
どうしようもないのかな、とこの状況を思うと同時に、
そうなのだと、どうすることもできないのだと、応えるように気付いてしまう。
彼女はここの住人だ。これからも、きっと、変わることなく。
帰る場所がないのだ。それが、どういうことなのか。]
――どうして、
[最後に、どうしようもなくやるせない気持ちが、短い言葉になってこぼれ落ちた。
どうして、と問いたいことは山ほどあったが、続く言葉はないままに、今度は視線も落ちてゆく。
ぐ、と力を込めていないと、今にも泣きだしてしまいそうだった。
それ以上、言葉が音になることはなく、ただ、掌に力を込めた。ひし、としがみつくように。**]
(109) nabe 2015/02/12(Thu) 02時頃