…によ、かんけい、ないじゃない。
[堰を切った声が、勝手に溢れ出す。
胸の内がこんなにもぐしゃぐしゃする理由が自分でも思い当たらなくて、溢れるに任せて震えた声を目の前の男へ吐き出した。]
わた…っ、わたしが、めかしもうが、誰に会おうが、あなたにちっとも関係ないじゃない!
似合わなくったって、よけいな、御世話よ…っ、…あなたって、いつもそう!
[ぼろ、と、瞳に張っていた涙の膜が揺らいで落ちる。
頭の隅で、滲んだ視界に映る彼の金の髪を、綺麗だな、と思った。場違いな思考。俯いて乱暴に手の甲で目元を拭う。──沈黙。]
…………おかえりなさい、って、…言おうと、思ってたのに。
[ぽつりと、周囲のざわめきに紛れ混んで消え入りそうな小さな声。
シメオンに聞こえたかは分からない。踵を返して人混みを走り出した。恥ずかしくて悲しくて、すぐにでも家に帰りたかった。誰も居ない、ひとりぼっちの家。]
(108) 2015/05/26(Tue) 03時頃