ありがとう。助かった。
[医務室へサイラスを運び込むと、寝かせた寝台の隣、そこには先客――ユーリィの姿があった。
その姿を見、嗚呼、と息を吐く。
視力を失った左眼が見て取る、ユーリィの身を巣食う呪い。
ふっと、彼はサイラスのことが好きだったのだと思い出し、並ぶ2つの身体を複雑そうな表情で見詰めた。ツキリと胸が痛むのは何故か判らぬまま、視線を彷徨わせば、ラルフの左手の親指の様に、その段階になって気がつく。なされたことから、そこは爪がうげるような状態であるのだろうか。]
ラルフ、指がっ……―――
[距離感つかめぬ手が、それ故に思うよりきつく、ラルフの左手首を掴む。]
すまない、気がつかなかった。
手当てをしよう。
[拒否を示されても構うことなく、半強制的に治療を行う。
行いながら、思い出すのは、同じく指を怪我していたベネットのこと。
夜にと、約束のようなことを謂ったけれど、それは叶えてやることが出来ないと思うのは、心境の変化から。彼が本懐を遂げたことは、識らないからこそ、沸くのは罪悪感。]
(107) 2010/09/08(Wed) 10時半頃