[薬を作り終えて、リビングに戻る。
マーゴたちの様子が気になって、風呂の入り口あたりをうろうろと所在なく歩き回っていれば。
中から聞こえてくるのは、ちゃぷ、というお湯のはねる音と祖母の鼻歌。そして]
「お嬢さん、あんたにゃこのあと、二種類の飲み物を選んでもらうんだけどね、」
[嗚呼。この言葉は。
村娘が旅人や暴漢に襲われた時、ぼろぼろの格好で泣きながらやってくることがある。またはその両親だったりもしたか。
望まない妊娠を防ぐために、祖母が取る、応急措置。もちろんそれは確実なものではなかったから、どんなに手を尽くしても赤ん坊が生まれてきてしまうことはあった。だから、孤児院には子供が後を絶えないのかもしれない。
そういう時に、祖母は訊くのだ。]
「その子を産む覚悟があるなら、温かいレモネードを。望まないならば、苦いお薬を。あんたはどちらを選ぶかね?」
[と。]
(107) 2015/04/20(Mon) 21時頃