― →本屋前 ―
[帽子の恩恵もよく分からないままに、商店街を黙々と進み。未だ光の無い本屋の脇で、その足を止める。電灯の陰になったか、白い少女の姿>>88には気づかず。
窓の奥で潜めく闇に視線を通しつつ。鈍くも染み付いた動作でマフラーの巻きを整え、無意識のままに機器に光を灯す。
――意外にも、約束していた時間はそう遠くもなかった。
きっと、変わらない薄笑いを浮かべて現れるのだろう。
そんな予測をゲーム気分で立てては、相変わらず詰まったような胸の重さを吐息に乗せつつ、また伸びた話に目を通す。離席の文字には、少しだけ胸が心細さに震えた。
その場にしゃがみ込み、膝の上に組んだ腕に顎をかけていれば。ふと、握ったままの機器の振動が、視線を引き寄せた。]
――――、 …迷った?
[柔く細められた瞳が、届いた言葉>>79に笑う。もしかすれば、予測は外れるのだろうか。それはそれで、いいと思った。]
(105) 2014/10/07(Tue) 18時半頃