― 朝:自宅アパート → 本屋前 ―
[辺りはまだ、ひんやりと静まり返っていた。かつ、かつ、と短い階段を下る足音がいつにも増して、青白い空へと溶けた。
もう少し眠る余裕はあった。その合間に足が竦んでしまう可能性もまた、同じく。
――結局、使えそうなテキストと、アイロンの熱がまだ残る手拭いを鞄に入れて。
後はいつもと変わらない恰好に、ベージュのキャスケットを鹿角に引っかけるように被り足すと、足音静かに外へと飛び出たのだった。]
[馴染み薄い脇道を歩く、その道中。
ふと機器に光を灯せば、通知の文字と共に名前>>2:404が一つ。受信欄を開けば、もう一通未読のメール>>36に気が付いた。
少し迷った末に、今から会う彼の物を先に覗く。
詰めた息を吐きながら、他愛ない文面を読み進め――吐き過ぎた胸の重さと共に、画面を戻した。文面が彷彿させる温い空気に、浸りたくはなかった。
――それでも。
最後に置かれた一文には、少しだけ頬を緩め。あの時>>1:11の見えぬ心境を想像しては、冷めた瞳を不思議そうにはたりと瞬かせるのだった。]
(104) 2014/10/07(Tue) 18時半頃