[サク、じゅわ、とすん。
それぞれの層をフォークが通り過ぎる度、異なる美味しい感触が耳と指先をくすぐる。
零さないよう息を詰めながら持ち上げた一口を、いつもより色の薄い唇の内へと迎え入れた。]
……!
[噛んだ瞬間、熱と旨味が爆ぜる。
舌に触れる熱さに肩を小さく跳ねさせた後、はふはふしながらも表情が緩んだ。
出来立てのパイ生地はサックサクで、中のフィリングはトッロトロ。底の生地は林檎の旨味を吸ってしっとりしている。
砂糖とバターが甘さと深みを引き立てているのに、しつこくないし甘過ぎない。]
宇都木さん……最高、です。
[メールが届いてから3日、しっかり熟成した期待をも上回る美味しさに、今度こそ完全に言葉を失った。
精一杯の賛辞を送った後、手はすぐに二口目へと伸びる。
しかしそこで手を止め、宇都木を手招きした。]
(103) 2019/11/26(Tue) 07時半頃