[ 旬では無いがズッキーニの花のフリットが ボードに記されていたのでそれをつまみで注文する いつもなら自分でメニューを吟味するのに 勧めにあったメニューばかりを頼んでしまう。 生ハムとチーズのカルツォーネを食したのは 覚えているのだけれど、心此処に非ず。 動揺のまま握り締めていた筈のハンカチと 浅いポケットから転がった煙草の箱は 床に転がり落ちてしまい、そのまま忘れた。 人の出入りが多い雑踏の酒場だ。 踏まれてしまっていてもおかしくはない。 春が来たらしいウェイトレスが気にかけて 落し物として拾ってくれたかもしれないが―― ]**
(103) 2019/05/21(Tue) 00時半頃