(只、ママの言い付けを……守っていた、だけ……だもん。)
[『お外は怖いところ』『変な人と関わっちゃいけない』『人を簡単に信用してはいけない』それからそれから、他にもたくさん。
たくさんの言いつけを破らないように家の中という殻に閉じこもった。只、それだけのことなのだ。
出来ることなら私も兄の様に――、そう思ってしまうのは嫉妬心故なのだろうか。
ぎゅう、とケン太くんを抱き寄せる力を緩めて道化はガスマスクを見上げる。
どうやら《混沌の貴公子》は兄の目には留まらなかったらしい。
しぱしぱと瞳を瞬けば、『やっぱりにぃはお外に出ている分、人を見る目があるんだね』と僅かに羨望の色を滲ませて。]
…………あ。
…………ほんとう、だ。
[場内のアナウンスに耳を傾ければ確かに受付で貰った組み分けのグループが繰り返し繰り返し召集されているらしく、名残惜しそうに兄の服を話せば『絶対そこに居てね』と念を押し。
ぱたぱたと指定された場所へと小走りで向かった。]
(102) 2015/03/17(Tue) 06時頃