[さて、どうにかこうにか、鞄の底から財布を探り当てれば。
先に二部分の銅貨をさっさと支払って、新聞売りから貰った一つを手に取った。
一面には、先日の議員の失言を糾弾する記事が、我が物顔でどっかりと鎮座していた。
この記事を書いた男はイアンの大先輩に当たる記者であるが、彼のことはあまり好いてはいない。
口を開けばジャアナリズム精神、だの、ジャアナリストは斯くあるべきだ、だの。
彼曰く、「崇高な正義」の名の下、ジャアナリストは記事を書かねばならぬのだそうだ。
–––ああ、反吐が出る。
イアンは、流し読みすることすらせずにその記事を読み飛ばす。
そんなくだらない理念を語る同業者に、彼は飽き飽きしているのだ。
そんな独り善がりの正義なんてものは、唾でも吐きかけて、ぐしゃぐしゃに踏み潰してやりたくてたまらない。]
(102) 2015/11/28(Sat) 19時半頃