[何も言わず、掴んだ腕も振り払わない彼の優しさに甘えているのが分かった。それが心地良くて、]
…その、指輪が初めてだったんです。
他にも沢山指輪をつくりましたが、婚約指輪を受けたのは、それが初めてだったから、よく覚えてます。
[その時の様子を思い出す。]
男性のお客さんが来て、「婚約指輪を作って欲しい。この世に二つとない最高の物を!」って、婚約者さんの写真を見せてくれたの。
婚約指輪なんて、作って事なかったから、本を読んだりして勉強したなぁ。そして、彼女の…お姉さんね、ふふ。お姉さんの写真を見比べながら、指輪を作ったっけ…
[彼は静かに聞いてくれているだろうか]
石の意味はね、「愛に満ちた幸せ者」。幸せそうな二人の写真を見た時から、あの赤い石を使おうと思ってたの…
お姉さんは、本当に残念だったけど…
[顔を上げて、彼の顔を見る]
(101) 2013/07/02(Tue) 00時半頃