[薄ぼんやり開いた目で相手の形を見ていた。それは人間が行う注目より、カメラが全体を映す感覚に似ていたかもしれない。焦点が合っている訳ではない。ただ室内にある見知らぬ形を見逃さぬよう、捉えているだけだ。 いつか、その影が部屋を離れる時、口にするつもりはなかったのだろう。あやふやな声が余韻の上に散らばった。] ―― にいさん。*
(99) 2021/02/16(Tue) 21時半頃