[薬師としての仕事は、ほぼすべて教わったといっていい。
近年、急激に目の悪くなってきた祖母に代わって、今では自分が薬屋の仕事をまかなっている。それでも、長年の経験からくる薬の見立てや、効き目の強い植物の見分けなんかは、まだまだ足元にも及ばない。
あんなに弱かった肺も、今ではすっかり良くなって。
両親から、戻ってこいとの催促はいまだにあるけれど、青年はここを、薬屋の仕事を離れる気はなかった。
作業台に採ってきたものを並べ、まずは不要な部分を削り取っていく。虫や泥なんかも綺麗に取り除いて、それが済んだら、麻縄で結って吊るしたり、細かくちぎって布の上に並べ乾燥させる。
木の皮は剥いで蒸留水に漬け込み、備え付けの小さな釜土には火を起こした。]
えーと?
[常備しておくべき薬のリストを眺めながら、残り少なくなったものを調合していく。
すでに乾燥させておいた薬用植物を、大きな薬研の中に少量ずつ加えて、取っ手を持ち前後に動かせば。
静かな工房の中に、ゴリ、ゴリ、と特有の音が響き渡った。*]
(99) 2015/04/16(Thu) 15時頃