─ GW直前夜/市街 ─ >>92
ああ。命のやり取りだよ。
[それでもゲームとして戦うのだ。
命を賭す不安は捨て去っている。
匕首が叩き落されるだろうことを予測にいれて、そのままマントを切り裂かなかった一本がはじき返されるのを受け取った。指で挟むのがうまくいかなければ、とっくに片手が小一時間は使い物にならなくなっている可能性もある。
けれどそんなの、人間の『傷は何日も治らない』という特性に比べれば些細なものだ。
非常に高価な高純度の銀製武器をここまで気軽に使える理由は――無論、邪道院の手助けに他ならない。
家だけでなく、銀製武器調達に関しても、六合は邪道院というパイプを持っていた。
突風にふわっと建物から離れた足。
吸血鬼となったこの身であれば、飛べるのだから再び垂直に立った建物を足場にし直すのは問題ない。
あの突風は厄介だ。マントは極力傷つけておく必要があった。
距離を詰めながら、攻芸は敵に塩を送られたことを了解していた。]
(98) 2019/04/30(Tue) 19時半頃