[パシュン、と、何かが破裂するような音と火花が小さな星の宙に散って、程なく、ゆっくりと、赤い光の玉が地表へと降りて来る。
窓の外を眺めていた者には、近づくにつれ、それが一面に張り巡らされた糸の上を複雑怪奇な軌道で赤い光が走り回る、繭玉のようなカプセルだと知れるだろう。]
やれやれ、酷い目に遭った。
[地表に到達した途端、繭玉の糸はシュルシュルと解け、一人の洒落者の姿を吐き出すと、小さな糸巻きに巻きついて、その手の内に収まった。]
こんな夜は一杯やるのが一番だ。
[男が被り直した帽子には明らかに何かで撃たれたに違いないと思われる不穏な穴が空いていたが、それはこんな場所では取り立てて珍しくもない。
例えば前髪に隠された片目にやっぱり穴が空いていたとしても...いやそれは、この場所ではなく、この洒落者の人生においては、かもしれないが。]
(98) 2022/08/06(Sat) 00時頃