[ ――先ほどの淑女はどこへ行ったのか、またも>>87 冷やかす色を含んで問われれば、こちらも調子を取り戻す。
名前、と思考を回す振りをした。諳んじられた台詞に沿って、目を細めた相手と緩く視線を絡める。]
――恋人?
[ 冗談半分、さきほどの意趣返し半分。首を傾げる癖はそのままに、言い終えてから本格的にナンパ野郎みたいだなとぼんやりと思った。また抓られたい趣味も無ければ、相手の反応を窺い切る前に訂正する。]
……シメオン。シメオン・ミグ。――高校生だよ。
それでジャニス、……さん。は、お忍び?
[ 申し訳程度に敬称を付けてから、揶揄う声色もひっそりと尋ねた。
それにしても、と。名の知れた舞台俳優に道案内を受けるなんて、今日はどういった日なのだろうと考えながら。
少なくとも、反芻じみた一日にはなりそうもなかった。]
(98) 2014/10/01(Wed) 16時頃