『"ショクを探しています"って人探しの欄に出てるもんだからよ。』
『そりゃあ気の長い話だな。このご時世、よっぽど褒美を弾まなきゃあ、そんな化け物探しに食いつくやつなんか居るわけねえ』
[こくり、と。
最後の苦味が溜まったコーヒーを飲み干して、空になったカップを置く。
噂話も気になるが、人と会う約束もあるものだから、早く向かわなければ。
アイロンが綺麗にかかったジャケットを腕に掛けて席を立つ。]
ごちそうさま。
お代はここに置いておくよ。
[手慣れた仕草で代金を受け取るウェイトレスへ、少しだけチップを弾んで会計を済ませれば、ふと、忘れ物を思い出した。
席へと戻る道すがら、遠くなった男のたちの声はショクからご時勢の話へ、やがては、家内の話へと転がっていく。
固そうな男はスクランブルエッグをすっかり食べきり、皿は既に空になっていて、髭の男は新聞の最後のページを読んでいた。]
失礼。
あなたが読んでいるその新聞。
私へ高く売ってくれませんか?
(97) 2016/10/07(Fri) 23時頃