― 現実と夢想の境界 ―
朝早くから重い荷物を背負って趣いては、理不尽な言葉を浴びせられる場所。
臨也にとって学校とはそういうものだった。
まるで軍隊か何かのように真っ黒な同じ服を着て、同じ鞄を持って。
センパイやセンセイという存在には逆らってはいけない。
誰も口にせずとも誰もが知っている暗黙の了解。
…だけれど、臨也は堪らなくそれが異質で異常なものに思えて厭だった。
教室の扉を蹴り開けて入るなり、クラスを担当する「センセイ」へ、
「――屋上行ってくらァ。」
告げるだけ告げて、可否も聞かず扉を閉める。
あとは廊下の端に位置する閑散とした階段を鼻歌交じりに登って、
立ち入り禁止の札のかかった屋上に続く鉄扉へ手を掛け、鍵も無いそこを開く。
そうして、校庭や町並みを見下ろす屋上の、――更に給水塔の上。
日当たりのいいその場所が臨也の指定席だった。
(96) 2015/02/04(Wed) 05時半頃