辰次……、飲兵衛の辰次、
ん。おぼえた――よ、
[団子を一口飲み込んで飲兵衛の方を見れば「わあ!」と高い声を。酒の香りにばかり気を取られていたせいか、男の腰に帯びる一振の其れ。義父が刀鍛冶の僕としては其れを見逃すわけにはいかず、目を爛々と輝かせた。]
すげェや!
それって真剣だろ?
辰次にィはお侍さんなのかァ?
[燥いだ様子で捲し立て、団子をひとくち。素人目に男>>87の刀は飾りではないように映り、それを目に食べる団子の美味しさは更に増すように思えて。
『二つありゃ二つ分美味い』の意味が少しだけ分かった気がしたんだ。すこぉしだけだけどね。何よりも隣の男がうんと美味そうに団子と酒を口にするもんだから、“そういうもの”なんだって思う他ないよなあ、って。
そんなことを考えていりゃあ突然に『鼠小僧って知ってるかい?』との問い。脈略が無いったらありゃしない、何事だと何度か瞬きをしてから団子を飲み込んで。少し呆れた顔。]
(95) 2015/01/19(Mon) 03時半頃