─ サイラスの部屋→医務室>>87 ─
[肩口に感じるディーンの吐息。
返る言の葉に、張り裂けそうに痛む胸のざわめきが少し落ち着くのは何故だろう。
まだ、ディーンが代償に片目の視力を失った事には気付かぬまま、薔薇の香りが立ち籠める部屋の中、抱きしめる腕にぎゅっと力を籠めながら、ラルフは二度頷いた。]
…う、ん。
夏期休暇中で、時間が掛かるかもしれないけど、
お医者さん呼ばないと──。
[薔薇の呪いは、ディーンともまた違う形でラルフも感じていて。
取り返しの付かない事態が、まだサイラスだけで済んでいる事に、ディーンの無事にラルフは安堵する。
深い眠りに落ちたサイラスの身を清める手伝い。寝台にうつ伏せられていた彼はどんな貌をしているのだろう。身を穿つ傷だけではなく、縛り戒められた痕跡がサイラスの手足に残る。後ろから獣のような姿勢で貫かれた事も含め、その行為の痕跡にラルフは既視感を覚え、途中で沈黙のうちに何度か手を止めた。]
(94) 2010/09/08(Wed) 05時頃